飼鳥情報センター  

  動物取扱業登録

2006年6月1日、改正動物愛護法が施行されました。これにより、動物取引にかかわっている広範囲の人々に、「動物取扱業」登録が義務づけられました。

 改正法では、動物取扱業のより一層の適正化を図るために、従来の「届出制」から、業の取消命令や業を始めるに当たっての事前チェックを効果的に行うことができる「登録制」(行政上の許可制)へと強化されました。

 動物取扱業の種別が「販売」「保管」「貸出し」「訓練」「展示」に分類され、従来は対象外であった、インターネット等を利用した代理仲介販売業者やペットシッター等、飼養施設を持たない動物取扱業者も、登録の必要があります。無登録営業は30万円以下の罰金が科されます。

 一般の飼養家であっても、巣引きしたヒナを第三者に譲渡する場合、あるいはネット上で「里親募集」の仲介をする場合などは、「動物取扱業者」と見なされ、登録が必要となる可能性があります。


注意しなければならないこと

 環境省が示している「業者」と見なされる基準は、「社会性」「頻度・取扱量」「営利性」のいずれにも該当することです。(詳しくは環境省該当ページ参照)
 具体的には、不特定多数に対して年間2回、2羽以上の営利目的の取引を行うこととされています。

 ここで注意しなければならないのは、無償であっても「営利」はあり得る、ということです。無償というのは一切の金品を受領しないということで、交通費・送料や動物病院での健康診断費用、エサなどの実費、あるいは手土産ですら「有償」に該当します。ヒナをペットショップに引き取ってもらって、お礼としてエサ1袋をもらう、ということも「有償」です。そうした一切の金品を受け取らなければ「無償」の取引ですが、それでも「営利」となる場合があるのです。
 その場では金品の授受がなされなくても、まわり回って取引によって利益が生じる場合は「営利」行為と見なされます。ペットショップに定期的にヒナを引き取ってもらい、その結果として「割引対象常連」扱いを受ければ営利行為です。

 また、自宅で巣引きしたヒナの取引ではなく、第三者の鳥を別の第三者に引き渡す仲介行為(いわゆる「里親探し」のお手伝い)も「販売」業に該当します。ここが間違われやすいところです。
 鳥を出す元親は年間2羽以上の営利行為であれば当然「販売」業登録が必要です。それに加えて、年間2羽以上の営利行為であれば仲介する者も「販売」業登録が必要なのです。たとえて言えば元親は「卸売業」で仲介者が「小売業」です。さらに、旅行中に鳥を預かったり、留守宅訪問して世話をするバードシッターは「保管」業登録が必要です。
 今回の改正法施行に伴う大きな要注意ポイントはそこにあります。

 まったくの善意・無償で里親仲介やバードシッターをされている方も多いと思いますが、その行為が「営利」であるのかどうか、お住まいの都道府県・政令指定都市動物愛護センター・保健所等に問い合わせ確認されておくことをお勧めします。
 イヌの譲渡情報を掲載する新聞・雑誌等の広告スペースを提供しているだけの場合は登録不要という判断もあるようです。そうした判断は都道府県ごとに行われますので、環境省ではなく地域の担当部局の見解を確認することが必要です。


<以下の説明は東京都の例です。都道府県によって若干の取り扱いの相違がありますので注意してください>

動物取扱業の登録

 登録をしておけば何の問題もありません。心配がある場合は「動物取扱業」登録をしておくことをお勧めします。
 詳しくはお住まいの都道府県動物愛護センター・保健所等に問い合わせていただくことになりますが、東京都の場合は以下の流れになります(詳しくは東京都動物愛護相談センターサイトを参照)。

 (1)動物取扱責任者講習を受講する
     → 動物取扱責任者となるためには資格要件があります。
 (2)登録申請をする(各種書類の提出・申請手数料の納入)
     → 申請手数料は東京都の場合1業種15000円、1業種増えるごとに+10000円です。
 (3)施設の立入検査を受ける
     → 原則2名の動物愛護センター職員による実地検査・測定等が行われます。
 (4)検査合格により「登録証」が交付される
 (5)営業開始
     → 法令や条例にもとづく諸義務の履行が必要です。
 (6)年1回以上の「動物取扱責任者研修」受講
 (7)5年ごとに登録更新手続き

<<動物取扱責任者となるための資格要件>>

 (1)営もうとする動物取扱業の種別ごとに、半年間以上の実務経験があること
     → 改正前の法による「届出」済み動物取扱業における経験に限ります。
 (2)知識及び技術について、1年間以上教育する学校等を卒業していること
     → 動物トリマー養成学校やイヌの訓練学校等
 (3)知識及び技術についての資格認定試験に合格していること
     → 愛玩動物飼養管理士や家庭動物販売士等

 2006年5月31日以前に動物取扱業「届出」を済ませていた場合は、その動物取扱責任(主任)者は半年後に(1)の資格要件が発生します。その届出をしていない場合は、(2)または(3)の資格要件を満たさなければなりません。

<<施行後1年間の経過措置>>
 2006年5月31日以前に「届出」を済ませていた動物取扱業者は、2007年5月31日までに登録を受ければ良く、それまでの間は無登録状態であっても従来通りの営業を継続することが出来ます。
 ただし、営業にあたっては改正法による諸基準の遵守をしなければなりません。


登録業者の義務

 登録業者となって営業する場合、法令や諸基準をを守らなければなりません。
 ネット上の広告・取引であっても同様です。

 <<遵守基準(平成18年1月20日環境省告示第20号)による>>

(1)広告表示に関する義務

 ・動物取扱業者標識の表示(個人であっても以下全件の表示義務があります)
    営業者の氏名、事業所名、所在地、動物取扱業の種別、登録番号、登録年月日、登録有効期限、動物取扱責任者の氏名
 ・安易な飼養を助長することを防止するため、誤解を招く内容を掲示しない
 ・動物を目視(写真を含む)確認できるようにすること。
 ・次に掲げる内容を顧客に見えやすいように表示すること。
   品種等の名称、性成熟時の標準体重・体長等大きさに係る情報、
   性別の判定結果(不明の場合は不明と表示)、生年月日(推定も可)、生産地等、
   所有者の氏名(自己の所有しない動物を販売しようとする場合)

 「所有者の氏名」表示が義務となっているところが、里親探しの場合のネックになる可能性があります。

(2)販売時の義務
 販売業者は、販売に係る契約時の説明および情報提供ならびに顧客による確認の実施状況について、台帳を作成し、5年間保管することが義務づけられます。
 具体的には説明マニュアルの配付(ネット上の確認も可)、顧客の確認書類へのサイン(確認メールも可能。その場合はプリント出力保管が必要)。さらに確認実施台帳、飼養施設及び動物点検状況記録台帳、繁殖実施状況記録台帳、取引状況記録台帳の記録保管が必要です。

(環境省サイトで示される書類)
ペット動物販売業者用説明マニュアル(哺乳類・鳥類・爬虫類)
販売時における説明及び確認(貸出時における情報提供)実施状況記録台帳

◆仕入れ元(元親)に対しても法令の遵守が求められます。取扱業者は仕入相手方(元親)に違反あるいは違反の恐れがないことを聴取し、違反があれば取引を行わないことが遵守基準に定められています。


飼鳥情報センター(当サイト)の取り組み

 当サイトは飼養管理情報提供サイトですから、里親探し等には積極的に取り組んでおりません。しかし当サイト管理人は「販売」と「訓練」の2業種についての登録を行いました。
 登録事業所名称 : ハッピーバードライフ
 登録番号 : 訓練 第100140号  販売 第100141号


 これまで、積極的ではないにしても「里親探し」仲介の実績がありますし、これからもその可能性がないとは言えません。これは「販売」業です。また、さまざまな場所で生体に対して「しつけトレーニング」を実施してきた経緯があり、これからも実施の可能性があります。これは「訓練」業に該当します。法改正前は自分の施設に生体を預かっての訓練でなければ対象ではありませんでしたが、改正法では「出張訓練」も対象としているからです。「販売」業だけの登録で顧客の鳥に「しつけトレーニング」をすれば、それは違法行為となります。

 当サイト及び当サイト管理人は、里親探しにしてもしつけトレーニングにしても「商売」でおこなうことはまったく考えていません。けれども書籍の出版等を行っているため、「結果として」営利行為と判断される可能性があること、そして何よりもcompliance(法令遵守)の考え方から、動物取扱業の登録を行いました。

 なお、当サイトおよび営業部門となった「ハッピーバードライフ」において、生体の販売はもとより、里親募集仲介や「しつけ」出張トレーニング等につきまして、積極的に募集・広告・営業する計画は、現在のところまったくありません。


雑感

 今回の改正法施行、業登録制度について考えさせられた点がいくつかあります。

◆ イヌを扱うペット商・ブリーダーをメインターゲットとした法改正
 市場規模であるとか問題の深刻さを考えれば、そうなることも理解は出来ます。けれども社会性が身に付く前の取引の制限や、取引に際して性別判定を求めるなど、鳥類に必ずしも合致しない項目が多く、申請を受け付ける動物愛護センター職員の方も判断に迷うところが多いようです。鳥類の「訓練」についても「それって一体なんのことでしょう?」と、まったく認識されていませんでした。現状では仕方がないのかもしれませんが…。

◆ 繁殖行為を抑制する意識が明らか
 安易な繁殖によるさまざまな悲しい出来事を少しでも減らそうということが法改正の大きな原動力でした。イヌの安易な繁殖は問題が大きいことも確かです。爬虫類の場合も「捨てイグアナ」が問題になる等、考えなければならない事実が増加していることもあるでしょう。
 けれども貴重なサイテス I 類種の繁殖に取り組んでいる方などを規制することはいかがなものかと思います(実際には、そうした方は業登録されるでしょうから問題はないと思いますが)。
 「命を生み出す」崇高な行為を趣味的に行うことの是非が問われている、ということも認識すべきです。無計画な繁殖が引き取り手のない子を生みだしていたり、あるいは近親交配により先天的障害を負った子が生まれる等の問題は現実にあります。
 ブリーディングそのものは素晴らしいことですから、ぜひ法令を遵守した上で計画的に取り組んで欲しいと考えています。

◆ 動物生体を取り扱う者から匿名性を排除しようという意
 ネット上での生体取引には悪質なトラブルが多数あり、そのことで今回法規制の対象となりましたから、関係当局のネット監視の目は厳しい状況です。ネット取引の問題点は、生体を実際に確認できないこと、生体を梱包して輸送すること等がありますが、それにも増して匿名性の問題が大きく指摘されています。
 ネット上での住所氏名の公開や、動物愛護センター職員による立入り検査を嫌う方も多いと思います。けれども
「命」を扱う取引には確実な責任を伴う、ということは頭に置いておくべきと思います。

◆ 生き物を取り扱う者は体系的な勉強をしておくべきこと
 「命」を扱う者は、業者であっても一般人であっても、常に経験と知識を磨いてゆくべきだということを、当サイトでは約10年前から主張し続けてきました。一面的な経験に基づく知識ではなく、きちんと体系的にまとめられた勉強をすべきである、という考え方を提案してきました。今回の改正法で動物取扱責任者の要件が厳しく設定されたのも、同じ考え方によるものと思います。
 今回の登録申請において、当サイト管理者は「1級愛玩動物飼養管理士」の資格を取得していることで要件を満たし、数年前に「東京都動物取扱主任」登録を済ませていたため、講習会の受講も免除(施行後1年間の経過措置)され、きわめてスムーズに登録を終えることが出来ました。
 愛玩動物飼養管理士は、「販売」「保管」「貸出し」「訓練」「展示」5業種すべての登録(動物取扱責任者の選任)に有効な、獣医師に次ぐ重要な資格になりました。それに何より、体系的に動物のことを勉強できる唯一の教育カリキュラムです。
 「販売」「保管」の登録に有効な「家庭動物販売士」という資格もありますが、これは完全に業者向きの「動物取扱責任者」「重要事項説明員」養成のためのものと言え、しかも3級であれば4時間の講習を受けた後に試験に合格するだけで取得できる資格であるため、私たち一般飼養者が動物取り扱いについて体系的な勉強をするには不向きだと思います。

 愛玩動物飼養管理士
   →「販売」「保管」「貸出し」「訓練」「展示」の登録に有効
     社団法人「日本愛玩動物協会」

 家庭動物販売士
   →「販売」「保管」の登録に有効
     全国ペット小売業協会



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